【建設業許可】営業所専任技術者(専任技術者)とは|要件・よくある失念パターン・変更届出を行政書士が解説

この記事のポイント
- 名称変更(2024年12月):「専任技術者」→「営業所技術者等」(要件に変更なし)
- 配置義務:建設業許可を受けた営業所ごとに常勤で1名(建設業法第7条第2号・第15条第2号)
- 退職・変更時:遅滞なく変更届出が必要。怠ると許可取消しのリスク
- よくある失念:退職・資格失効・常勤性の喪失・変更届出の遅延が許可要件欠如につながる
- 2024年12月改正:一定要件下で専任現場の主任技術者・監理技術者との兼務が可能に
建設業許可を取得・維持するうえで、営業所専任技術者(営業所技術者等・旧称:専任技術者)の確保は最重要要件のひとつです。しかし、「退職したのに変更届出を出し忘れていた」「資格が失効していた」「常勤でなくなっていた」といったケースで、気づかないうちに許可要件を欠いてしまう事業者が後を絶ちません。
この記事では、建設業許可申請を専門とする行政書士が、専任技術者の基本から、よくある失念パターン・対処法・変更届出の手続きまで解説します。
目次
こんな状況になっていませんか
専任技術者が退職したが、後任が見つからず届出もしていない
退職後も許可はそのままだと思っていたが、実は許可要件を欠いた状態になっている可能性がある。
専任技術者の資格証の更新を忘れていた
取得時は資格があったが、更新が必要な資格の場合、失効していることに気づかないまま時間が経過している。
専任技術者が現場に出るようになり、実質的に常勤でなくなっている
人手不足で専任技術者を現場に出したところ、営業所での常勤性が失われた状態になっている。
「専任技術者」という名称が変わったと聞いたが、何か手続きが必要かわからない
2024年の法改正で名称が変わったと聞いたが、自社への影響や必要な対応が不明。
営業所専任技術者(営業所技術者等)とは
建設業法は、建設業許可を受けた営業所ごとに、請負契約の技術的な管理をつかさどる者(営業所技術者等)を常勤で置くことを義務づけています(建設業法第7条第2号・第15条第2号)。
2024年12月13日施行の名称変更:従来「専任技術者」と呼ばれていた役職は、建設業法改正により以下のとおり名称が変わりました。
・一般建設業許可の場合:営業所技術者(建設業法第7条第2号)
・特定建設業許可の場合:特定営業所技術者(建設業法第15条第2号)
・両者の総称:営業所技術者等
なお、名称の変更のみであり、法律上求められる要件に変更はありません。本記事では慣用表現として「専任技術者」も併記します。
・一般建設業許可の場合:営業所技術者(建設業法第7条第2号)
・特定建設業許可の場合:特定営業所技術者(建設業法第15条第2号)
・両者の総称:営業所技術者等
なお、名称の変更のみであり、法律上求められる要件に変更はありません。本記事では慣用表現として「専任技術者」も併記します。
専任技術者の役割
専任技術者は、営業所において以下の業務を担います。
- 建設工事の請負契約における技術的な内容の確認・指導
- 請負契約の適正な締結の確保
- 施工内容の技術的管理
専任技術者は工事現場の主任技術者・監理技術者とは別の役職です。主任技術者・監理技術者は個別の工事現場に配置される技術者であり、専任技術者は営業所に常勤する技術者です。この区別を混同しているケースが見受けられます。
専任技術者の要件
一般建設業許可の場合(建設業法第7条第2号)
以下のいずれかに該当する者が必要です。
| 要件の種類 | 内容 |
|---|---|
| ①国家資格 | 許可を受けようとする業種に対応する国家資格(1級・2級施工管理技士、建築士等)を有する者 |
| ②指定学科+実務経験 | 許可業種に関する指定学科を卒業後、高校卒業は5年以上・大学卒業は3年以上の実務経験を有する者 |
| ③10年以上の実務経験 | 許可を受けようとする業種において10年以上の実務経験を有する者 |
特定建設業許可の場合(建設業法第15条第2号)
一般建設業より要件が厳しく、原則として以下のいずれかが必要です。
| 要件の種類 | 内容 |
|---|---|
| ①1級国家資格等 | 許可業種に対応する1級国家資格(1級施工管理技士、1級建築士等)または国土交通大臣が定める者 |
| ②一般建設業の専任技術者の要件+元請としての実績 | 一般建設業の専任技術者要件を満たし、かつ元請として4,500万円以上の工事に関し2年以上の指導監督的実務経験を有する者 |
常勤性の要件
専任技術者は、原則としてその営業所に常勤し、専らその業務に従事する必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 常勤性の基本 | 原則として、その営業所が所在する同一市区町村内または隣接市区町村内に居住し、通常の勤務時間内に営業所に勤務できること |
| 認められる兼務 | 自社の代表取締役・役員との兼務は可(他の業種の専任技術者との兼務も、同一営業所内であれば可) |
| 認められない兼務 | 他社の専任技術者・常勤役員等との兼務(いわゆる「掛け持ち」)は原則不可 |
2024年12月改正による兼務の緩和(建設業法第26条の5):改正前は、専任工事現場(請負代金4,000万円以上等)の主任技術者・監理技術者との兼務は一切認められていませんでした。改正後は以下の要件をすべて満たす場合に限り、1現場までの兼務が可能になりました。
・請負代金が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)であること
・ICT機器等を活用して工事現場の状況を確認できること
・その他省令で定める要件(計画書の作成・保存等)を満たすこと
・請負代金が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)であること
・ICT機器等を活用して工事現場の状況を確認できること
・その他省令で定める要件(計画書の作成・保存等)を満たすこと
よくある失念パターンと対処法
以下は、建設業許可の維持において実際に多く見られる失念・違反パターンです。いずれも許可要件の欠如・変更届出義務違反に該当し、最悪の場合は許可取消しにつながります。
退職・死亡時の変更届出を怠った
専任技術者が退職・死亡等により不在になったにもかかわらず、変更届出を提出しないケース。「後任が決まってから届け出ればよい」と誤解している事業者が多い。建設業法第11条第3項の変更届出義務に違反し、行政庁の指示・営業停止・許可取消しのリスクがある。
✓ 対処法:後任者を遅滞なく確保し、変更届出(様式第22号の2)を提出する。後任確保が困難な場合でも、まず行政庁への相談と届出を優先すること。
資格の有効期限切れ・失効に気づかなかった
専任技術者の要件を資格で満たしている場合、資格証の有効期限管理が必要な資格(登録基幹技能者等)で失効が生じるケース。資格が失効した時点で専任技術者の要件を満たさなくなる。
✓ 対処法:専任技術者が保有する資格の有効期限を定期的に確認し、更新手続きを計画的に行う。社内で資格台帳を作成・管理することが有効。
専任技術者を工事現場に常駐させた
人手不足を理由に、専任技術者を長期間工事現場に常駐させるケース。営業所への常勤性が失われた時点で専任技術者の要件を欠くことになる。2024年12月改正後も、要件を満たさない現場への兼務は認められない。
✓ 対処法:工事現場への配置が必要な場合は、改正後の兼務要件(請負代金1億円未満・ICT活用等)を満たすか確認する。要件を満たさない場合は、別途現場技術者を手配する。
他社との掛け持ち(二重在籍)を見落とした
専任技術者が在籍しているつもりだったが、実は他社にも常勤役員等として届け出られていたケース。健康保険証・雇用保険等の確認が不十分だと見落としやすい。
✓ 対処法:採用時および定期的に、社会保険・雇用保険の加入状況を確認し、他社との重複がないことを確かめる。
業種の追加・変更後に専任技術者の要件確認を怠った
許可業種を追加した際、追加業種に対応する専任技術者の要件を改めて確認しなかったケース。業種ごとに必要な資格・実務経験が異なるため、既存の専任技術者が新業種の要件を満たさないことがある。
✓ 対処法:業種追加・変更の申請前に、対象業種における専任技術者の要件(資格・実務経験)を必ず確認する。要件を満たす者がいない場合は、先に人材確保を行う。
実務経験証明の書類を廃棄・紛失していた
実務経験で専任技術者の要件を満たしていたが、更新申請や変更届出の際に過去の工事実績を証明する書類(工事台帳・請求書・契約書等)が見当たらないケース。
✓ 対処法:建設業許可に関連する書類(契約書・注文書・工事台帳等)は5年間(一部10年間)の保存義務があることを踏まえ、社内での適切な書類管理体制を構築する。
変更があった場合の届出手続き
専任技術者に変更が生じた場合、建設業法第11条第3項に基づき、遅滞なく変更届出を提出しなければなりません。
| 変更の内容 | 提出書類(主なもの) | 期限 |
|---|---|---|
| 専任技術者の交代(退職・新規採用) | 様式第22号の2(専任技術者証明書)、新任者の資格証・実務経験証明書等 | 遅滞なく(目安:変更後2週間以内) |
| 専任技術者の氏名変更(婚姻等) | 様式第22号の2、住民票(変更後のもの) | 遅滞なく |
| 専任技術者の担当業種変更 | 様式第22号の2 | 遅滞なく |
変更届出を提出しないまま放置すると、建設業法第11条違反となります。行政庁の立入検査等で発覚した場合、指示処分・営業停止・許可取消しの対象となるほか、役員等の個人にも罰則が科される可能性があります(建設業法第50条・第52条)。
よくある質問
営業所専任技術者(専任技術者)の名称が変わったのはなぜですか?
2024年12月13日施行の建設業法改正により、「専任技術者」という名称が「営業所技術者等」に変更されました。一般建設業許可は「営業所技術者」(建設業法第7条第2号)、特定建設業許可は「特定営業所技術者」(建設業法第15条第2号)となります。ただし、名称の変更のみであり、法律上求められる要件に変更はありません。
専任技術者が退職した場合、どのような手続きが必要ですか?
遅滞なく変更届出(様式第22号の2)を提出する必要があります。後任者が決まってからではなく、退職が決まった時点で速やかに対応してください。後任の確保が困難な場合は、行政書士等の専門家に早めにご相談ください。
代表取締役や役員が専任技術者を兼務することはできますか?
はい、可能です。申請会社の常勤の代表取締役や役員であれば、営業所専任技術者の業務と役員の職務を兼務することができます。ただし、他社の代表取締役や役員との兼務は原則認められません。
専任技術者は工事現場の主任技術者・監理技術者と兼務できますか?
2024年12月13日の建設業法改正以前は、専任工事現場の主任技術者・監理技術者との兼務は認められていませんでした。改正後は、請負代金が1億円未満(建築一式は2億円未満)の工事でICT活用等の要件を満たす場合に限り、1現場まで兼務が可能になりました(建設業法第26条の5)。
専任技術者の要件を満たす人がいなくなった場合、許可はどうなりますか?
後任の確保ができない場合、該当業種の建設業許可を維持できなくなります。許可要件の欠如が判明した場合は、行政庁からの指示・営業停止・許可取消し処分の対象となる可能性があります。速やかに専門家にご相談ください。
